Tetsuya Machida 2015

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家識草 -フィカス・バーガンディのイエガタ -
Ficus Burgundy,Old Wood, Iron Sand 1200 mm high x 3000 mm wide x 2000 mm depth 2015 非売


 自らが自らのものを説明すると碌なことがないと弁えた上で書くことにする。

 つくづく自らを辿りなおし、幼少時には庭で穴を掘り(穴だらけの庭の写真が残されていた)、おそらく雨の日には畳の上で積み木(これも写真がのこされている)ばかりをしていた。あの時の日々が現在の私の基本を構成しているのだから、その系に育まれた心情に逆らわずに残りを生きようと決めたのは、生を受けて半世紀が過ぎていた。振り返れば大学の抽象表現のクラスでも卒制まで八王子の山の中樹木を切り倒して材を準備しこしらえていたことを伴って憶いだす始末だった。いずれ燃やすだろう消えてしまうインスタレーションを今更殊更に行うのも、積み木の仕草の延長に従ったと云えばそれまでだが、現況という現場空間を進捗を得ながら構築できるのは、やはりこうした作業ではないかと、再認識している。
 プランドローイング的(プランとはいっても目的化を排除する傾向がある)な平面と、積み木型工作的オブジェの制作を十五年ぶりに再開し、写真や映像の新たな取り組み(纏め)もはじめながら、「私という気質」を貧相であっても構わず表出することが、私の考える倫理的構想の実現となると考えの軸を深く地に差し込むことができるようになった実感はある。
 
 黒ゴムの木がまずあって、古木を使ったイエガタを草木の為にこしらえた風情の今回のインスタレーションは、表面に最近使いはじめた鉄粉(純度高い極めて細かい化学実験用のもの)を振りまいてから、如雨露で水をやり、時間とともに錆びていくことを追加作業としてインスタレーションに与えている。イエガタは、飯綱町牟礼夏川から少し下った場所に在る農作業小屋がモチーフとなっており、写真作品として別個に制作中である。スケール的には1/10程度の俯瞰サイズであり、これはモチーフの小屋自体の在り方と距離感によって創出されたもので、実尺現物を構築するつもりは全くない。断片的形骸的モノの顕われから形象的併置へ促された理由はさまざまであり、イエガタを構想する前段階としては樹木間に浮かぶ「舟型」があり、天狗の宇宙船などという奇想もあった(まだある)。今年からはじめた木炭紙の素描も、木炭を横に置いてこの鉄粉のみを使うことを夏よりはじめた。90年代に工業用研磨剤の炭化ケイ素を画布に定着させる制作をしていた時期があり、「粒子」という事柄は、「併置」論的には究極的な置かれ方であると現在も考えて継続している。

文責 町田哲也