五年前に更新改変した環境を只管歩き採集した枝から取り組みを再開した立体作品制作の空間への意識は、自らの系譜を遡り、時が流れても残りつづけたイメージを重ね合わることで、ある意味象徴的に整理する反復工作へ単純化されていった。同時に再開した平面作品の「併置」論要素の「3D」記号配置としてこれを援用することで、両者の反復を更に後押しする格好になった。
私の立体やインスタレーションの空間の捉えは、空間の性格と容積に照応することから始まるので、壁面が整えられたホワイトキューブとなった倉庫ギャラリーは、一年前のがらんどうの倉庫そのものとは性質が全く異なったものとなり、キューブの風情などに頓着する暇はなく、そこへ与える形態のディティールが繊細に剥き出しになって見えてくる超現実と、まずは直に向きあわなくてはならない。スタジオでの反復作業を単にゴロンと持ち込むだけでは済まされない相応の対応が、場から求められた。
グループ展の中で展開したナガノオルタナティブ2015では、古材による小屋への憑依をひとつのインスタレーションとしたが、同様の一過的な「ひとつ」の意匠でこの空間に対峙するには準備期間が短かったので(このスケールでは少なくとも半年は必要と思われる)、日々の反復断片をありのままに併置して示しつつ、相乗的に空間を刻む位置を探しながら、分岐的に生まれた、「図」「階段」「机」を、先行投資的に併置する空間構成とした。故に、今回の「反矩形」空間は、2016年という一年の経過と進捗が示される性格になっている。
少ないもので五つ、七から九つ、時には更に複雑に構成することもある、古材断片を立体的に繋ぎ磨き時には塗装する反復工作が、俳句や短歌の、言語構造のセンテンスに似ていることに気づき、意識的に構造化された断片塊の空間に作用する陰影などを詩的に、過去(家具や住空間)や時間を「連想」させる不完全な個体として併置することで、恣意の観念性を抑制する働きがうまれた。2016年初頭に行った選択材のサイズから若干空間への対応を考慮しつつスケールを拡張させたこの仕掛けの洗練は、更に逆説的に直情的な姿勢を朴訥に示すので、今後の展開として、純化反復と空間へのひとつのアプローチといった二極性を抱えることになった。
飯綱三郎天狗の伝承から、紐解いて解釈を与えた「天狗宇宙舟百二艘」は、三年前のプランドローイングが下敷きになっている、寓話的戯曲的「図」的な読解的構築のインスタレーションとして試みたものだが、状況設営の行為性(材・手法)の拡張を余儀なくされ、これは単純反復の陥る閉鎖的な傲慢を払拭する生存手法(サバイバル)として頗る効果があることに気づいた。
文責 町田哲也