prevention 2017

ナガノオルタナティブ 2017 「プリベンション」

招聘作家

2017年7月:徳永雅之 (1960~) / 画家
*2017年9月:松本直樹 (1982~) / 美術家
*2017年9月−10月:丸田恭子 (1955~) / 画家
*2017年10月:広瀬毅 (1960~) / 建築家
2017年11月:北澤一伯 (1949~) / 美術家

*autumn crossing / 個展ー共有空間構築期間を挟む


プリベンション

  ー「現代美術」は従来の美術の範疇から離脱して、別の範疇として考えねばならない表現行為となった。ー

とはじまる、私の恩師のひとりでもある画家、宇佐美圭司氏(1940~2012)著作「絵画論」(1980年発刊)は、時代の空気を象徴的に明証する言葉が鏤められており、36年がすぎた現在でも、

  ー「現代美術」は概念としての美をもう一度混沌の方へおしやる。ー
  ー「現代美術」は、美的な範疇で技術を磨くことを表現行為と見なさぬだろう。ー
  ー 私は、美とは何か、美の規準がどのように変化するかを論じないだろう。ー

と、今を生きる美術家の背筋を矯正する力がある。

 当時の美術家を志望する者たちの「失画症」から進む「絵画論」には、自閉症の病例記録を引用し絵画論の理論展開へ繋げ、やがて「プリベンション」という概念が示される。
これは、表現行為とそれをささえる知の中間に置かれる媒介項=装置として示されており、それによって感性が作用する場を変えるのだが、装置は感性に順応することによっては形成されないと続ける。美術表現には、見たまま感じたままといった個の感性に根ざした入口が待ち受けているのではなく、装置をつくるといった観念的で知的な操作が要求され、プリベンションによって感性が運動をはじめる場が設定されるのだと展開する。
 「失画症」の描く動機を喪失した「景色の描けない」画家たちに、「描く」とは何か、「描かれること」は何か、を強く問いながら、自らのプリベンションシステムのマニュアルのように明晰展開される「絵画論」には、現代の視覚藝術に関わる者たちの「牧歌的」なマイノリティー気分にメスを入れるに充分な気概が充ちている。

 2017年ナガノオルタナティブのサブテーマを「プリベンション」とし、固有な表出展開(プリベンション)を行う作家諸氏を個展形式にて招聘し、これを開催する。彼らの知性の中央に置かれたプリベンションとは一体何かを更に追求し見極めたい。
 各個展開催時に、ゲストパネラーを招いたトークイベント・ライブなどを併催予定。

文責・企画 / 町田哲也